足の痛み

慣れない正座や長時間同じ姿勢でいると、一時的に足が痺れたり痛くなったりすることがあります。これは体の一部が圧迫されることで血流が一時的に阻害され、感覚が鈍くなるもので、圧迫が解除されれば数分で改善するのが通常です。
しかし、楽な姿勢で安静にしているにもかかわらず足に痺れや痛みが現れる場合、何らかの病気が隠れている可能性があります。
このような足の痛み・症状はありませんか?
- 足が痺れる、感覚が鈍くなった
- 足先の冷えが続いている
- 皮膚の色が白っぽい、あるいは紫色に変化している
- 足の痛みで夜中に何度も目が覚める
これらの症状が見られる場合、血流や神経の異常が疑われます。症状が続くようであれば、早めの受診をお勧めします。
足がもつれるのは脊柱管狭窄症?
歩いていると足に痛みや痺れが出て、歩き続けることが困難になるものの、前かがみになったりしゃがんだりすると再び歩けるようになる、このような状態を「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と呼びます。
間欠性跛行は、脊柱管狭窄症の典型的な症状の1つであり、診断の重要な手がかりとなります。
進行すると、腰の痛みのほか、両足の麻痺、会陰部(肛門周り)の痺れ、尿漏れや排尿障害といった深刻な症状が現れることもあります。なお、同様に神経が圧迫される「腰椎椎間板ヘルニア」と比較すると、脊柱管狭窄症は強い腰痛を伴わないことが多いとされています。
足の痛みで考えられる疾患
特に体を動かしていないにもかかわらず、足に痛みや痺れが現れる場合、以下のような疾患が原因の可能性があります。
下肢閉塞性動脈硬化症・下肢末梢動脈閉塞症
動脈硬化が進行し、足の血管が狭窄・閉塞することによって起こる疾患です。
代表的な症状としては、足の痺れ・冷感・皮膚の青白さ、歩行中に足が痛くなり休むとまた歩ける「間欠性跛行」などが挙げられます。 さらに、足の小さな傷が治りにくくなり、潰瘍や壊疽(えそ)といった症状が現れ、重症化すれば足の切断に至るケースもあります。
下肢静脈瘤
足の静脈には、血液の逆流を防ぐための弁が備わっていますが、この弁が壊れることで血液が逆流し、静脈が浮き上がって蛇行する疾患です。 ふくらはぎなどにデコボコとした血管の隆起が見られるほか、軽度の場合にはクモの巣状に細い血管が浮かび上がる程度の変化に留まることもあります。 その他、足の痛み・むくみ・頻繁につる・皮膚の色素沈着など、不快症状が続くのが特徴です。
深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
ふくらはぎの奥深くにある静脈に血栓(血の塊)ができる病気で、長時間同じ姿勢を続けた際などに発症しやすく、特に飛行機や長距離移動後に起こることが多いため「エコノミークラス症候群」とも呼ばれています。
血栓が形成されると、片脚のむくみや痛み、皮膚の変色などが現れます。さらに、血栓が血流に乗って肺まで移動すると「肺塞栓症」を引き起こすことがあり、その場合は息切れ・動悸・胸の痛み・呼吸困難などの重篤な症状を伴い、突然死のリスクもあるため早急な対応が必要です。
脊柱管狭窄症
背骨の中にある「脊柱管」という神経の通り道が、加齢や椎間板の変性などをきっかけに狭くなることで、神経を圧迫して様々な症状を引き起こす病気です。 脊柱管が狭くなると、神経が慢性的に圧迫されるため、足の痺れや痛み、歩行時に足がもつれる「間欠性跛行」、腰痛、筋力の低下、さらには排尿や排便のコントロール障害などが現れることもあります。
足首のリウマチ
自己免疫の異常によって自分の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患の1つです。
足首に発症した場合、関節の痛みや腫れが生じ、進行すると関節の変形を引き起こします。 悪化すると歩行が困難になるほど強い痛みを伴うこともあります。
足底腱膜炎(そくていけんまくえん)
足底腱膜炎は、かかとの痛みを訴える疾患の中で最も発症頻度が高いもので、特に中高年の女性やスポーツ選手に多く見られます。
足底腱膜とは、かかとからつま先に向かって縦方向に広がる扇状の腱で、足裏のアーチ(土踏まず)を支える重要な役割を担っています。 長時間の立ち仕事や、マラソン・ウォーキングなどで足裏に過度な負担がかかると、足底腱膜がかかとの骨に付着している部分で炎症を起こし、強い痛みが生じるようになります。
外反母趾(がいはんぼし)
外反母趾は、足の親指が人差し指側に「くの字」に曲がり、親指の付け根が突出して痛みを伴う病気です。
変形した部分が靴に当たることで炎症が起こり、進行すると靴を履いていない状態でも痛みが出ることがあります。 原因の多くは、足の形に合わない靴による圧迫で、特につま先が細く幅の狭い靴やヒールの高い靴は負担が強まり、変形が悪化しやすくなります。若年層では偏平足や親指が人差し指より長い足型の方に多く、中高年では幅が狭い靴に加え、肥満や筋力低下が発症リスクを高めます。
軽度の段階であればストレッチや装具による保存療法で改善が期待できますが、痛みが強く歩行に支障が出る場合には手術を検討することもあります。
足関節捻挫(足関節靭帯損傷)
足関節捻挫とは、足首を捻ることで靭帯や周囲の軟部組織が損傷する外傷です。
外くるぶし周辺に痛み・腫れ・押すと強い痛み(圧痛)が出るのが典型的な症状です。スポーツ中の怪我として最も多いだけでなく、階段の踏み外しや転倒といった日常生活でも起こりやすいのが特徴です。捻挫に伴って靭帯が傷つくことが多いため、「足関節靭帯損傷」と表現されることもあります。
損傷の程度に応じて治療が異なり、軽度であれば受傷後2〜3日は「安静・冷却・圧迫・挙上(RICE処置)」を行います。部分的に靭帯が切れている場合には2〜4週間程度のギプス固定が必要になり、完全断裂の場合は外科的な手術を行うケースもあります。捻挫を軽く考えず、早めに整形外科での診察を受けることが大切です。
アキレス腱炎
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)の力をかかとの骨に伝える重要な腱です。アキレス腱炎は、この腱に炎症が生じることで、歩き始めや運動時にふくらはぎからかかとにかけて痛みや腫れが起こります。 特に陸上競技や剣道など、ジャンプや走行を繰り返すスポーツをする方に多く見られる疾患です。発症した場合は、無理な運動を控えて安静を保ち、患部の冷却や保存療法を中心に治療を進めていきます。
足の痛みは当院へご相談ください
足の痛みには、下肢閉塞性動脈硬化症・下肢静脈瘤・深部静脈血栓症・脊柱管狭窄症・関節リウマチなど、健康状態や生活の質(QOL)に大きく影響する疾患が隠れていることがあります。「少し痛むだけだから」と自己判断で放置せず、思い当たる原因がないまま症状が続いている場合には、できるだけ早めに当院へご相談ください。
