首の痛みについて

首は常に頭を支えているため大きな負担がかかっており、寝違えなどの際にその重要性を実感することがあります。日常的に頻繁に動かす部位でもあるため、痛みが生じると強い不快感やストレスに繋がります。
ここでは、首の痛みの原因や治療法、予防・セルフケアについて解説します。
部位別にみる痛みの原因
首の痛み…左側だけ
原因には、筋肉や関節の可動性の低下、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎捻挫(むち打ち)などが考えられます。
首の痛み…右側だけ
筋肉や関節の動きが悪くなっていることが主な原因の1つです。
この場合、入浴で体を温めたり、軽いストレッチやマッサージを行うことで症状の改善が期待できます。 ただし、痛みが数日以上続く、または徐々に悪化する場合には、頚椎椎間板ヘルニアや頚椎捻挫の可能性もあり、腕や手に痺れや痛みが現れることもあります。
首の痛み…後ろだけ
後頚部の痛みに腕や手の痺れ・痛みが伴うときは、頚椎椎間板ヘルニアの疑いがあります。
さらに、脳梗塞やくも膜下出血といった重大な疾患が原因で後頚部の痛みが生じることもあるため、このようなケースが疑われる場合には速やかに医療機関を受診する必要があります。
首の痛みを伴う症状
肩こり・首のこり
肩から首にかけてのこりや張りといった違和感に加え、頭痛、吐き気、めまいなどの症状を伴うことがあります。
これらの症状の背景には、姿勢の悪さや運動不足、ストレス、体の冷えなどによって、僧帽筋(肩から首にかけて広がる筋肉)が緊張し続けることが関与していると考えられます。
寝違え
朝起きたときに、首から肩にかけて鋭い痛みを感じるケースが「寝違え」です。
首を少し動かすだけでも痛みが強くなり、動かせなくなることもあります。 原因としては、睡眠中に不自然な姿勢が長時間続くことで血流が滞る、前日の運動によって筋肉に過度な負荷がかかる、あるいは頚椎の椎間関節を包む関節包に炎症が起きるなどが挙げられます。
筋肉や靭帯の損傷
スポーツや転倒、交通事故などによって首周辺の筋肉や靭帯が損傷すると、痛みを伴うことがあります。
日常の怪我から激しい衝撃を伴う外傷まで、様々な要因で発生する可能性があります。
首の痛みで考えられる病気
頚椎症
加齢に伴って首の椎骨や椎間板が変性し、周囲の神経が圧迫されることで発症する疾患です。
主な症状として、首や肩のこり・痛み、腕や手足の痺れや痛み、さらには歩行時に足がもつれるといった神経症状が現れます。
頚椎椎間板ヘルニア
年齢による変化、外傷、またはスポーツや重労働による負担などが原因で、首の椎間板が変性し、神経根や脊髄を圧迫する病気です。
首の痛みのほか、手足の痺れ・痛み、歩行時のふらつき、排尿・排便機能の障害などが見られることがあります。特に、首を後ろに反らす動作で症状が悪化しやすいのが特徴です。
関節炎(変形性関節症)
加齢によって頚椎の関節に変形が生じ、神経が圧迫されることで痛みが出る疾患です。
首や肩、背中のこりや痛みに加え、手足の痺れや痛みといった症状が見られます。
頚部脊柱管狭窄症
椎間板の変性や関節の変形、靭帯や軟部組織の肥厚などにより、脊柱管が狭くなって脊髄や神経根が圧迫される疾患です。
首・肩・腕の痛み、手や指の痺れ、歩行時のふらつき、つまずきやすさ、さらには排尿障害など、様々な神経症状が現れることがあります。
くも膜下出血
「頭をバットで殴られたような強烈な頭痛」と表現される激しい頭痛のほか、吐き気・嘔吐を伴うのが特徴です。
その前兆として、首の痛みや痺れ、視力の低下といった症状が現れることがあります。 これまでにないタイプの首の痛みや、時間とともに悪化するような痛みがある場合には、早急に医療機関を受診してください。
悪性リンパ腫
血液のがんの一種で、首のリンパ節にしこりや痛みが現れることがあります。
進行すると、発熱、寝汗、体重減少などの全身症状を伴うこともあり、早期発見・早期治療が重要です。
首の痛みの診断と検査
問診・診察
まずは首の痛みの経過や症状の詳細について、丁寧にお話を伺います。
併せて、視診および触診を行い、首周囲の動きや腫れ、緊張の有無などを確認します。
レントゲン検査
骨の変形、ずれ、関節の異常、頚椎の配列状態などを確認するために、レントゲン撮影を行います。
超音波検査
筋肉や靭帯に炎症がないか、血流の状態に異常がないか、リンパ節が腫れていないかなどを調べるため、超音波検査を実施します。
MRI検査
レントゲンや超音波では確認できない、椎間板・神経・筋肉・血管といった軟部組織の状態を詳しく調べるためにMRI検査を行います。
必要に応じて、CT検査、筋電図、神経伝導検査などの精密検査を行うことがあります。
首の痛みの治療
薬物療法
痛みや炎症を抑える目的で、消炎鎮痛薬や解熱鎮痛薬、湿布薬を使用します。
加えて、症状に応じて筋肉の緊張を緩めるお薬や、痺れを緩和するお薬なども処方されることがあります。 これらはあくまで症状を軽減する「対症療法」であるため、お薬の効果が切れた後に再発しやすい傾向があります。
再発を防ぐためにも、セルフケアやリハビリなどの根本的な改善にも積極的に取り組むことが大切です。
リハビリテーション
痛みが強い時期は、無理をせず安静にすることが基本です。必要に応じて、頚部を支えるためのサポーター(頚椎カラー)を装着することもあります。 痛みが軽減してきた段階では、温熱療法・電気治療・牽引といった物理療法や、筋力強化や柔軟性向上を目的とした運動療法(ストレッチ・トレーニング)を実施していきます。
注射療法
薬物療法やリハビリでは不十分な場合には、関節注射、トリガーポイント注射、ハイドロリリース(筋膜リリース)などの注射療法が検討されます。
装具療法
痛みが強くて首を動かすことすら困難な場合には、「頚椎カラー」と呼ばれる固定装具を使用して、首の安静を保ちます。
手術療法
保存的な治療を行っても症状の改善が見られない場合には、神経の圧迫を解除するなどの外科的治療が検討されます。
手術が必要と判断された際には、迅速に連携医療機関をご紹介します。
首の痛みの予防・セルフケア
寒冷療法・温熱療法
炎症が強い急性期(痛み始めから数日間)は、タオルで包んだ保冷剤や氷嚢を使って冷やすと、痛みや腫れの軽減が期待できます。 それ以降は、温めることで血流を改善し、慢性的なこりや痛みの緩和に役立ちます。シャワーや入浴、ホットタオル、温湿布などを活用しましょう。
首・背中のストレッチ
首から背中にかけての筋肉を優しく伸ばすストレッチも有効です。 例えば、椅子に腰かけた状態で、ゆっくりと首を前に倒すストレッチがあります。このとき、姿勢が崩れないように背筋を伸ばし、身体が前後に傾かないよう注意してください。
