骨粗鬆症とは
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは、骨密度の低下と骨の構造異常により、骨が脆くなって骨折しやすくなる病気です。 WHO(世界保健機関)では、「骨量の減少および骨組織の微細構造の異常により骨の脆弱性が増し、骨折のリスクが高まった状態」と定義されています。
日本国内の推定患者数は約1,280万人にのぼり、女性に多く見られる(男女比1:3)のが特徴です。特に閉経後の女性は急激に骨密度が低下するため、高齢女性にとっては重要な疾患と言えるでしょう。 骨粗鬆症になると、わずかな衝撃でも骨折しやすくなります。例えば軽くつまづいたり、転倒しただけで骨折することがあり、知らないうちに背骨が圧迫骨折を起こしているケースも少なくありません。
なかでも、背骨や太ももの付け根(大腿骨近位部)の骨折は、寝たきりの原因となるリスクが高いため、注意が必要です。そのため、骨粗鬆症は「骨が折れる前に」見つけ、治療を始めることがとても重要です。
当院では、骨粗鬆症の診断・治療ガイドラインでも推奨されているDXA法(デキサ法)を用いて、骨密度を高精度に測定しています。 検査によって、痛みの原因が骨粗鬆症によるものか、それとも他の疾患によるものかを丁寧に見極め、適切な対応を行います。 健康診断で「骨密度が低い」と指摘された方、身長が以前より縮んだと感じる方、転倒していないのに背中や腰に痛みがある方、姿勢が前かがみになってきたと感じる方などは、一度当院までご相談ください。
骨粗鬆症の症状
骨粗鬆症は、初期にはほとんど自覚症状がないまま進行します。
このため「サイレント・ディジーズ(静かな病気)」とも呼ばれており、実際に骨折をして整形外科を受診するまで気づかない方も少なくありません。 骨粗鬆症が進行すると、わずかな転倒や日常の動作などの軽い衝撃で骨折が起きる「脆弱性骨折」が生じやすくなります。
特に骨折しやすい部位としては以下が挙げられます。
- 背骨(脊椎)の圧迫骨折
- 手首の骨(橈骨遠位端骨折)
- 太ももの付け根(大腿骨頚部骨折)
こうした骨折が起こると、背中や腰の痛みが現れ、気づかないうちに身長が縮んだり、背中が丸くなる(円背)といった体型の変化が起こることもあります。
骨粗鬆症を発症しやすい人
骨粗鬆症の発症リスクには、体質や生活習慣などの個人差がありますが、いくつかの共通した危険因子が存在します。
最も代表的なのは「加齢」です。
50歳を過ぎる頃から年齢とともに骨密度は低下しやすくなり、特に背骨や大腿骨といった骨折が起こりやすい部位のリスクが高まることが明らかになっています。 以下のような項目に該当する方は、骨粗鬆症のリスクが高いとされており、当てはまる数が多いほど注意が必要です。
- 50歳以上である
- 過去に骨折歴がある
- 両親または片親が骨折したことがある(特に大腿骨の付け根)
- 骨粗鬆症の家族歴がある
- 痩せ型・細身(低体重傾向)
- 閉経後の女性
- 持病がある(糖尿病・慢性腎臓病・甲状腺機能亢進症など)
- ステロイド薬を現在または過去に使用している
- 運動不足が続いている
- 飲酒習慣がある
- お酒に弱く、すぐに顔が赤くなる体質
- 喫煙習慣がある
- カルシウムやタンパク質の摂取が不足している(小魚・大豆製品などをあまり食べない)
- 無理なダイエットを繰り返した経験がある
骨粗鬆症の発症のメカニズム
骨は常に「骨代謝(リモデリング)」という新陳代謝を繰り返しており、古くなった骨を壊す「骨吸収」と、新たな骨を作る「骨形成」がバランス良く行われることで、硬さと強度を保っています。
しかし、このサイクルの均衡が崩れ、骨吸収の速度が骨形成を上回るようになると、骨の密度が徐々に低下してしまいます。その結果、骨の内部がスカスカになり、少しの衝撃でも骨折してしまうような状態、つまり骨粗鬆症が生じます。
特に影響を受けやすいのは、脊椎(背骨)、大腿骨頚部(太ももの付け根)、肋骨といった部位です。これらは骨粗鬆症による「脆弱性骨折」が起こりやすく、「背が低くなった」「背中が丸くなった」「太ももの付け根を骨折した」「くしゃみで肋骨が折れた」といった特徴的な症状が現れることもあります。
骨粗鬆症の原因
骨粗鬆症は、骨代謝と呼ばれる骨の新陳代謝のバランスが崩れることで引き起こされます。
この疾患にはいくつかのタイプがあり、特に明確な発症要因が見られないものは「原発性骨粗鬆症」と呼ばれます。
一方、他の病気が誘因となって発症するものは「続発性骨粗鬆症」と分類され、それぞれ原因の背景に違いがあります。
原発性骨粗鬆症
骨粗鬆症の中で最も多く見られるのが「原発性骨粗鬆症」であり、明確な病気などの原因がなく、複数の要因が関与して発症するタイプです。 原発性骨粗鬆症には、閉経後の女性に多い「閉経後骨粗鬆症」、男性に見られる「男性骨粗鬆症」、さらに突発的に発症する「特発性骨粗鬆症」などが含まれます。
※特発性骨粗鬆症とは、加齢などに関係なく急激に進行するタイプで、若年期に起こる「若年性骨粗鬆症」や妊娠・授乳を経て発症する「妊娠後骨粗鬆症」などが該当します。
女性ホルモン量低下
日本における骨粗鬆症の罹患率は、50歳以上の女性で約25%、男性で約4%とされ、女性に多く見られる疾患です。
これは、閉経によって女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に低下することが影響しています。 エストロゲンには、骨を作る働きを促進し、骨を壊す働きを抑える役割があります。
そのため、閉経後や卵巣摘出手術後などでホルモン量が減少すると、骨量も減り、骨粗鬆症のリスクが高まります。
加齢
年齢を重ねるにつれてホルモンバランスが変化するため、男女とも50代以降になると、徐々に骨量が減少していきます。
運動不足
日常的な運動量が不足すると、骨や筋肉を維持する刺激が減少し、骨が脆くなりやすくなります。
また、骨の健康に関わるビタミンDは日光に当たることで体内生成が促されるため、外出の機会が少ない生活もリスク要因となります。
骨折歴
過去に骨折した経験がある方は、同じ骨密度であっても骨折のリスクが約1.8倍に高まるとされています。
これは、骨密度の低下に限らず、骨の質や脆弱性に問題を抱えている可能性があるためです。骨折歴のある方は、骨粗鬆症のリスクが高いと考えられます。
遺伝的要因
母親と娘の間では骨密度の遺伝率が約70%とされており、特に両親のいずれかに骨折歴がある場合は約1.18倍、両方に骨折歴がある場合は約1.54倍も骨折リスクが高まると報告されています。
喫煙
喫煙と骨密度の間には関連性があり、1日の喫煙本数が多い、または喫煙歴が長い人ほど骨密度が低い傾向にあるといわれています。
長期間喫煙していた方やヘビースモーカーは、骨粗鬆症のリスクが高まります。
飲酒・カフェイン
1日あたり日本酒1合、ビール中瓶1本、ワイングラス2杯相当のアルコール(約20g)を超える飲酒は、骨粗鬆症の発症リスクを上昇させるとされています。加えて、お酒を飲むと顔が赤くなる体質の方は、飲酒量にかかわらず大腿骨骨折のリスクが高いとの報告もあります。 また、アルコールやカフェインを過剰に摂取すると利尿作用が強まり、カルシウムが体外に排出されやすくなる点も問題です。
ストレス
強いストレスを受け続けると、腸からのカルシウム吸収が妨げられることが知られており、それが骨の健康に悪影響を与える要因となります。
続発性骨粗鬆症
骨粗鬆症の中には、内分泌系などの疾患や薬剤の影響によって引き起こされるタイプがあり、これを「続発性骨粗鬆症」と呼びます。
原因
続発性骨粗鬆症の原因となる病気には、糖尿病や甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、関節リウマチ、慢性腎臓病、肝疾患、骨形成不全症、アルコール依存症、動脈硬化、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などが挙げられます。
薬剤の副作用
薬剤の副作用によっても骨粗鬆症が引き起こされることがあります。
なかでも、関節リウマチやがん治療に用いられるメトトレキサートやステロイド薬などは、骨の形成を抑える作用があるため、長期間使用することで骨量が減少し、骨粗鬆症のリスクが高まるとされています。
骨粗鬆症の診断基準
骨粗鬆症の多くを占める「原発性骨粗鬆症」については、次のいずれかの条件を満たす場合に診断されます。
1.脆弱性骨折あり
ごく弱い衝撃で骨折してしまう「脆弱性骨折」が確認された場合、骨粗鬆症と診断されます。
例えば、立ったままの状態から軽く尻もちをついた程度の衝撃で骨折するようなケースが該当します。
特に、脊椎(背骨)、大腿骨頚部(太ももの付け根)、骨盤といった部位に発生することが多く見られます。 また、これらの主要部位に骨折がなくても、他の部位に脆弱性骨折があり、かつ骨密度が若年成人の平均値の80%未満である場合も、骨粗鬆症の診断対象となります。なお、骨密度の基準値は腰椎では20〜44歳、大腿骨では20〜29歳の平均値が用いられます。
2.脆弱性骨折なし
明らかな脆弱性骨折が見られない場合でも、骨密度の数値によって診断されることがあります。
具体的には、骨密度が若年成人平均の70%以下、または若年者平均値からの偏差(SD:標準偏差)が−2.5以下となった場合、骨粗鬆症と判断されます。
骨粗鬆症の検査
骨粗鬆症は早期の発見と治療が非常に重要です。
当院では、現在の骨の強さを評価する「骨密度検査」に加えて、将来的な骨密度の変化を予測するために「血液検査」も実施しています。
血液検査では、骨代謝の指標となる骨吸収マーカーや骨形成マーカー、ビタミンDなどを測定し、骨の健康状態を総合的に把握します。 特に閉経後の女性や65歳以上の方は、自覚がないまま骨折する「いつの間にか骨折」を予防するためにも、半年ごとの定期的な検査をお勧めしています。
①問診・視診
まずは問診と視診を通して、骨粗鬆症のリスクや自覚症状の有無を確認します。
身長の急激な低下がないかなども、身体測定でチェックします。また、過去の病歴やご家族の骨折歴など、骨粗鬆症に関係する因子がないかを詳しく伺います。
②骨密度(骨量)の測定
当院では、日本骨粗鬆症学会が推奨する「DXA(デキサ)法」によって骨密度を測定しています。
これは2種類のエネルギーを持つX線を照射し、骨の中を透過する際の減衰を分析して骨量を評価する方法です。 さらに、短時間で測定可能な高速型の「骨密度測定装置」も導入しており、予約なしでも当日中に検査結果をご説明できます。
③X線検査(レントゲン検査)
レントゲン検査では、骨粗鬆症の特徴的な変化として知られる脊椎の変形の有無などを確認します。脊椎X線は、骨粗鬆症の診断のみならず、類似する他の骨疾患との鑑別にも役立ちます。
当院では、従来の装置に比べて被ばく量が少なく、撮影直後に画像を確認できる「デジタルX線検査システム」を導入しています。
④血液検査
骨の代謝過程では、様々な成分が血中に現れます。これらは「骨代謝マーカー」と呼ばれ、血液検査で確認することで骨の形成や吸収のバランスを評価でき、将来的な骨密度の変化も予測可能です。
たとえ骨密度が保たれていても、この検査によって骨粗鬆症の兆候が早期に見つかる場合があります。骨粗鬆症が進行し始めているかどうかの判断材料としても有効です。 ※骨代謝マーカーの検査結果は、通常1週間程度でご説明可能です。
骨粗鬆症の治療
骨粗鬆症を発症すると、骨が脆くなり、わずかな衝撃でも骨折しやすくなります。
そのため、治療の主な目的は骨折を予防し、骨の健康を維持することで、日常生活における活動性や生活の質(QOL)を損なわないようにすることです。
特に注意すべき骨折として、大腿骨近位部(太ももの付け根)や脊椎(背骨)の骨折が挙げられます。これらの部位の骨折は、高齢者にとっては寝たきりの原因となることがあり、予防の重要性が非常に高いとされています。 治療の基本は、骨量を増加させることを目指した生活習慣の見直しで、食事療法や運動療法が中心となります。これに加え、必要な場合には薬物療法も併用し、総合的に治療を進めていきます。
なお、生活習慣の改善は継続することが何よりも重要です。当院では、患者様が無理なく日々の取り組みを続けられるよう、丁寧に相談しながら治療方針を決定しています。
①食事療法
骨量の維持・増加を図るうえで、骨の構成要素である「カルシウム」をはじめとする各種栄養素をバランス良く摂取することが重要です。
高齢になると活動量の減少や食欲低下により、必要な栄養素が不足しやすくなります。また、加齢に伴って食の嗜好が変化し、骨の健康に欠かせないタンパク質の摂取量が減少する傾向も見られます。そのため、年齢に応じた栄養バランスを意識することが大切です。
骨の形成を支える主な栄養素
- カルシウム
- ビタミンD
- ビタミンK
- マグネシウム
- タンパク質
カルシウムは骨の主要な構成成分であり、ビタミンDやビタミンK、マグネシウムはその吸収や利用を助ける働きを担っています。
特にマグネシウムが不足すると血中のカルシウム濃度が低下しやすくなるため、意識して摂取することが推奨されます。なお、カルシウムとマグネシウムは「2:1」の割合で摂るとより効果的です。
骨の健康に役立つ食品の例
- 乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)
- 大豆製品(納豆・豆腐)
- 魚類(イワシ・鮭・鯖)や小魚(ししゃもなど)
- きのこ類
- 葉野菜(モロヘイヤ・ほうれん草・小松菜など)
- 海藻類(ひじき・昆布・海苔)
- ナッツ類
- ごま
これらの食品を日常的に取り入れることで、必要な栄養素を効率良く摂取できます。
一方、以下のような食品・飲料は、カルシウムの吸収を妨げる可能性があるため、過剰に摂らないよう注意が必要です。
- リンを多く含む加工食品(スナック菓子・インスタント麺・一部の清涼飲料水など)
※リンはカルシウムの代謝に必要な栄養素ですが、摂取バランスが崩れると骨に悪影響を及ぼします。
カルシウムとの比率が「1:1」であれば問題ありません。 - 食塩の多い食品
- アルコール類
- カフェインを多く含む飲料(コーヒー・紅茶など)
当院では、管理栄養士による栄養指導も行っております。
診察時に食事の傾向やライフスタイルをお伺いしたうえで、無理のない食生活改善をご提案いたします。お気軽にご相談ください。
②運動療法
運動によって骨に適度な刺激が加わると、骨細胞が活性化され、骨密度の向上が期待できます。
そのため、骨粗鬆症の予防・進行抑制には、継続的な運動が大切です。
当院では、患者様それぞれの痛みの有無や関節の変形、姿勢などを丁寧に評価した上で、個々に合わせた運動指導を行っております。例えば、脊椎や膝に変形がある場合は、それらの部位に負担をかけずに行える内容を提案しています。
ご自身で取り入れやすい運動の例
週に2回程度、1回30分を目安に以下のような運動を無理のない範囲で続けることが効果的です。
- ウォーキング
- 自転車走行
- 水中ウォーキングやスイミング
- 太極拳、社交ダンス など
また、運動といってもスポーツだけが対象ではありません。
掃除や洗濯などの日常動作でも、骨に負荷をかけることで骨細胞の活動を促す効果が見込めます。
例えば、
- エレベーターではなく階段を使う
- 買い物は徒歩で出かける
- 室内で足腰を鍛える軽い体操を行う
といった工夫でも、骨の強化に役立ちます。
※なお、膝や股関節に変形がある方など、持病をお持ちの方は運動内容に注意が必要です。無理に始める前に整形外科での相談をお勧めします。 以下では、自宅で取り組める骨の維持に効果的なトレーニングをご紹介します。
片足立ち運動
- テーブルや椅子の背もたれの横に立ち、片足を少し浮かせてバランスを取ります。
- ふらつく場合は、安定のため手を添えても構いません。
- 背筋を伸ばし、正しい姿勢を意識して行いましょう。
- 左右それぞれ1分ずつ、1日3セットを目安に継続するのが理想です。
ウォーキング
- 背筋を伸ばし、胸を張って歩きましょう。
- 腕を大きく振り、歩幅は70〜80cm程度を意識します。
- つま先で地面を蹴り、かかとから着地するように心がけましょう。
- 朝15分・夕方15分など、最初は1日30分以内から始め、体力がついてきたら時間や距離を延ばしていくと良いでしょう。
※目安としては1日6,000〜7,000歩ですが、歩数よりも「継続すること」が最も重要です。
※運動時は、通気性のよい動きやすい服装と、クッション性のある歩きやすい靴を選びましょう。体調がすぐれない日は、無理をせず休息をとるようにしてください。
③薬物療法
薬物療法とは、文字通りお薬を用いた治療方法であり、骨粗鬆症に対しては主に以下の3つの作用を持つ薬剤が使用されます。
- 骨の破壊(骨吸収)を抑えるお薬
- 骨の形成を促すお薬
- 骨の構成成分を補うお薬
患者様の骨折の有無や病態、年齢、性別などを総合的に評価したうえで、単剤または複数のお薬を組み合わせて処方します。
骨の破壊(骨吸収)を抑えるお薬
骨を壊す破骨細胞の働きを抑制し、骨の吸収を抑える薬剤が骨粗鬆症治療の第一選択となります。代表的なのが「ビスホスホネート(ビスフォスフォネート)」で、骨密度を維持し骨折のリスクを軽減する効果が期待されます。
その他、「抗RANKL抗体薬」なども同様の働きを持ち、使用されることがあります。 また、閉経後の女性に対しては、減少した女性ホルモン(エストロゲン)に代わる作用を持つ「選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)」が効果的であり、第一選択薬となるケースもあります。
骨の形成を促すお薬
骨を作る細胞である「骨芽細胞」の働きを活性化させるために、「副甲状腺ホルモン製剤」が使用されることがあります。
副甲状腺ホルモン自体は本来、骨吸収を促進する作用を持ちますが、間欠的に投与することで骨芽細胞が優位に働き、結果として骨形成が促されます。
骨の材料を補うお薬
骨を構成する栄養素を補う目的で、カルシウムやビタミンD、ビタミンKなどを含むお薬も併用されます。
お薬の効果や副作用、服用方法などでご不安がある場合は、自己判断で中止・減量せず、必ず医師や医療スタッフへご相談ください。誤った対応は症状を悪化させる恐れがあります。
骨粗鬆症の予防
骨粗鬆症は「予防」が非常に重要な疾患です。
骨密度の低下には、加齢や閉経、遺伝的要因といった避けられないものもありますが、生活習慣の工夫によって回避できるリスクも存在します。
そのため、日々の生活の中で「骨密度を下げないこと」を意識した行動を心がけることが予防に繋がります。
栄養バランスを意識した食事
カルシウムをはじめ、骨の健康に必要な栄養素を食事からしっかり摂取することが基本です。
カルシウムは過剰摂取に注意が必要ですが、通常の食事からの摂取であれば問題ありません(※サプリメントからの摂取は1日あたり上限2,300mgを目安に)。 併せて、ビタミンD、ビタミンK、マグネシウム、リン、タンパク質の摂取も骨粗鬆症予防に重要です。
日光に当たる習慣
ビタミンDは、日光を浴びることで体内でも合成されます。カルシウムの吸収を助けるためにも、日光浴を日常的に取り入れましょう。
目安としては、夏場は木陰で30分程度、冬場は顔や手に1時間程度の日光を浴びると良いとされています。
適度な運動の継続
骨は適度な刺激を受けることで骨細胞が活性化されます。30分程度の軽いウォーキングでも効果が期待できます。無理なく継続することが最も大切です。
禁煙と飲酒の節度
喫煙には、カルシウムの吸収を妨げる作用があるほか、女性の場合は骨からのカルシウム流出を防ぐ女性ホルモンの分泌を阻害する影響もあります。
また、アルコールには利尿作用があるため、過度な飲酒は体外へのカルシウム排出を促してしまいます。飲酒はほどほどにし、節度ある量を心がけましょう。
骨粗鬆症のよくある質問
男性や若年女性は骨粗鬆症にかかりにくいのでは?
いいえ、「男性だから」「若いから」と安心するのは危険です。
男性でも、50歳前後から徐々に骨量が減少し始め、60代では注意が必要なレベルに、70代では女性の発症者数に匹敵するほど多くの男性が骨粗鬆症を発症しています。80歳前後になると骨密度は20代の約70%まで低下し、5人に1人(約20%)が骨粗鬆症を抱えていると報告されています。
また、男性は骨格が大きく、動きもダイナミックな傾向があるため、転倒した際に強くぶつけたり頭部を打ったりすることで、より深刻な外傷に繋がるリスクもあります。 一方で、閉経前の若年女性でも注意が必要です。出産後は女性ホルモンが急激に減少し、骨密度が一時的に低下します。さらに、母乳によって赤ちゃんにカルシウムが移行することで、さらに骨量が減ることがあります。
通常であれば、授乳を終えた後に徐々に骨密度は回復しますが、過去に無理なダイエットや栄養バランスの悪い食生活をしていた方では、元々骨が弱っている場合があり、妊娠・出産・育児による負荷が重なって「妊娠後骨粗鬆症」を発症するケースも報告されています。
痛みがなければ、治療しなくても大丈夫ですか?
いいえ、痛みがないからといって安心するのは禁物です。 骨粗鬆症は「骨折しやすい状態」であるにもかかわらず、多くの場合は症状が出ません。骨折して初めて痛みが現れるため、それまでは気づかれにくいのが特徴です。
高齢者の中には、骨折に気づかないまま背中や腰が丸くなり、身長が縮んでから初めて異変に気づく方もいます。 骨折による痛みは治療により軽快しますが、根本原因である骨粗鬆症を放置しておくと、新たな骨折を招くリスクが高まります。実際に、骨粗鬆症による骨折を一度でも経験した方は、未経験の方と比べて新たな骨折を起こす可能性が約2倍に高まると報告されています。
「痛みがない=治療不要」ではなく、将来の骨折予防のためにも、継続的な治療が大切です。
運動がなかなか続きません。
運動はスポーツに限りません。生活の中に“軽い動き”を取り入れることから始めましょう。
例えば、
- 車で行っていた買い物を徒歩に変える
- バスを利用する際は、目的地より手前で降りて歩く
- エスカレーターを使わずに階段を利用する
といったように、普段の生活に少しずつ体を動かす工夫を取り入れるだけでも立派な運動です。
また、史跡巡りやダンスなど「趣味として楽しめる活動」も運動として有効です。大切なのは、気持ち良く、楽しく続けられることです。仲間と一緒にウォーキングや水中歩行を楽しむことで、気分転換にもなり、継続のモチベーションにも繋がります。 さらに、日々の運動記録をつけることで、努力の積み重ねを可視化でき、習慣化にも繋がるでしょう。
引用文献
- (参考)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン(2015年版)P.4| 日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団
- 藤原 佐枝子「2.骨粗鬆症の疫学と危険因子」日本内科学会雑誌 2005年 94巻 4号 p.614-618
- 河路 秀巳, 伊藤 博元「骨粗鬆症の診断と治療」日本医科大学医学会雑誌 2009年 5巻 1号 p.41-46
- 山本 直子, 柚木 靖弘, 依田 健志, 山中 義之, 藤本 壮八, 松村 友里, 井上 雅子, 坂東 多恵子, 勝山 博信, 高尾 俊弘「人間ドック受診者における喫煙指数(ブリンクマン指数)と骨密度の関連」禁煙科学 2019年 vol.13巻 05号 p.1-5
- (参考)プレスリリース2017年|慶応大学医学部
参考文献
- 東 浩太郎「1.骨粗鬆症発症のメカニズム」日本老年医学会雑誌 2019年 56巻 2号 p.116-123
