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肩の痛み

肩の痛み

肩の痛み

肩の痛みには様々な原因があり、その性質によっていくつかのタイプに分類されます。
以下では、代表的な肩の痛みの種類をご紹介します。

肩こり

最も一般的な肩の痛みが「肩こり」です。筋肉に疲労物質が蓄積し、血流が悪化することで筋肉がこわばり、痛みや重だるさを引き起こします。原因としては、長時間の不良姿勢、運動不足、精神的ストレスなどが背景にあることが多く、生活習慣との関連が深い症状です。

肩関節の炎症

「四十肩」「五十肩」とも呼ばれる肩関節周囲炎は、加齢などを背景に肩関節の周囲組織に炎症が起こることで生じます。多くの場合、上腕二頭筋の腱に炎症が見られます。

肩関節の損傷

肩関節内にある「関節唇」や「腱板」といった組織が損傷することで起こる肩の痛みです。
スポーツなどで強い負荷がかかった際に生じることもありますが、日常生活での小さな負担の積み重ねによっても損傷が進行することがあります。

肩の痛みで考えられる疾患

肩の痛みは、痛む場所によってある程度原因となる疾患を特定することができます。

付け根の前側・外側

四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)

加齢により肩関節や周囲の筋肉・腱などが損傷し、炎症が生じることで発症します。
スポーツや家事、衣服の着脱といった日常的な動作でも肩を動かすことで痛みが現れ、可動域の制限により生活に不便を感じることが増えます。特に夜間に痛みが強くなるのが特徴です。

腱板損傷・腱板断裂

「腱板」は、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つの筋肉に付着する腱によって構成されており、これが損傷または断裂した状態を指します。 原因は加齢のほか、スポーツ・外傷・喫煙習慣など多岐にわたります。腕を上下に動かすときに、肩の付け根付近に鋭い痛みが走ることがあります。

石灰性腱炎

肩の腱板にカルシウムが沈着し、それが炎症を引き起こす疾患です。
突然、強い痛みが現れるのが特徴で、肩を上げられなくなるほどの症状を伴うことがあります。動かしたときだけでなく、安静時にも痛みが続くケースもあります。

肩峰下インピンジメント症候群

甲骨の先端にある肩峰と腱板との間にある「肩峰下滑液包」は、クッションの役割を果たしています。
この部分に繰り返し負荷がかかることで炎症が起こり、肩の痛みに繋がります。 腕を90度以上持ち上げる、または90度以下に下ろす動作で痛みが誘発されることが多いです。

片側だけ

四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)

四十肩・五十肩は通常、片側の肩に発症します。
加齢に伴い、肩関節周囲の筋肉や腱などの組織が損傷し炎症が起こることで、肩を動かしたときの痛みや可動域の制限が生じます。

肩峰下滑液包炎

肩甲骨の先端に位置する肩峰と腱板の間にある肩峰下滑液包が炎症を起こす疾患です。
クッションの役割を果たすこの部分に炎症が生じると、腕を90度以上持ち上げたときや、90度以下に下ろしたときに痛みが現れます。

ローテーターカフ損傷

ローテーターカフ(腱板)は、肩の安定性に重要な4つの筋肉から構成されます。
転倒や打撲、繰り返される肩への衝撃などが原因で損傷すると、肩の痛みに加えて腕が上がらなくなることもあります。痛みが肩から腕にまで及ぶケースもあります。

鎖骨骨折

転倒やスポーツ時の接触、交通事故などによって鎖骨が折れると、肩に鋭い痛みが生じます。
鎖骨は構造上、比較的折れやすい部位です。

骨粗鬆症

骨密度が低下し、骨が脆くなった状態です。
主に加齢や女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下が原因で、特に閉経後の女性に多く見られます。骨折が肩の痛みとして現れることもあります。

関節リウマチ

免疫の異常によって関節が誤って攻撃され、炎症や変形を引き起こす慢性疾患です。
肩関節だけでなく、手指や膝など全身の関節に痛みや腫れが生じることがあります。

肩関節脱臼

スポーツ中の衝突や転倒、交通事故などで肩の関節が外れた状態です。
強い痛みを伴い、肩や腕を動かすのが困難になります。見た目にも肩の位置がずれることがあります。

肩関節唇損傷

野球やテニスなどのオーバーヘッド動作を繰り返すことで、肩関節内の軟骨(関節唇)が損傷する疾患です。
動作時に鋭い痛みや「ゴリッ」という音、肩が外れそうな感覚が生じるほか、腕を下げた状態で肩を上から押すと圧痛を感じることもあります。

首から肩

頸肩腕症候群(肩こり)

首・肩・腕にかけて痛みやこりが生じる症候群で、多くは筋肉の過労が原因です。
不良姿勢、運動不足、長時間の同一姿勢、精神的ストレスなどが筋肉の緊張を招き、血流が悪化することで発症します。

頚椎症(頚部脊椎症)

加齢に伴って首の椎間板が変性し、骨の変形(骨棘)などが生じることで神経を圧迫し、首から肩にかけて痛みや可動域の制限が起こる疾患です。圧迫される部位によっては、腕や手の痺れ・痛み、足がもつれる、歩行が不安定になるなどの神経症状が現れることもあります。

頚椎症性神経根症

特に40代前後の女性に多く見られ、デスクワークなどで長時間前かがみの姿勢を取ることが習慣化している方は要注意です。
首から肩、腕にかけて痛みや痺れが生じるほか、頚椎椎間板ヘルニアを合併しているケースも少なくありません。

筋筋膜性疼痛症候群

首から肩にかけての慢性的な痛みやこり、可動域の制限を伴う疾患で、筋肉と筋膜(筋肉を覆う膜)にトリガーポイントと呼ばれる圧痛点が生じることが特徴です。原因は外傷や過度な運動、反復動作、冷え、ストレス、睡眠不足など多岐にわたります。

注意すべき肩の痛み

関節リウマチ

自己免疫の異常により関節に炎症が起こる病気で、手足の関節に多く見られますが、肩の関節が侵されることもあります。 肩の可動域が狭まり、腕が上がりにくくなるほか、腫れや慢性的な痛みを伴うことがあります。全身症状としては、微熱、倦怠感、疲労感が現れることも特徴です。

胆石症

胆嚢や胆管など胆道に結石ができる疾患で、特に胆嚢に結石がある「胆嚢結石」が大半を占めます。 典型的には、食後に右上腹部、右背部、右肩、みぞおちにかけて差し込むような痛みが出現します。

心筋梗塞

命に関わる重大な心疾患で、胸の痛みだけでなく、左肩や左の背中にかけて痛みが放散することがあります。 冷や汗、吐き気、息切れを伴う激しい痛みが特徴で、このような症状がある場合には、直ちに救急対応が求められます。

肺がん

肺がんが進行・転移した場合、肩や背部に痛みを感じることがあります。 初期には咳、痰、息切れ、胸の違和感などが見られますが、症状が乏しいまま進行することもあるため、定期的な検診による早期発見が非常に重要です。

肩の痛みは何科?

肩の痛みで受診する場合、基本的には整形外科が適しています。
ただし、内科や救急外来が必要となるケースもあります。以下を目安にしてください。

肩を動かすと痛みが強くなる場合

関節の構造以上や神経の圧迫などの問題が疑われるため、整形外科の受診が推奨されます。

肩を動かさなくても痛みがある・痛みに波がある場合

冷や汗を伴う強い痛みがある場合、心筋梗塞や胆石症の可能性があり、すぐに救急外来を受診してください。 一方で、痛みが軽度で短時間で治まった場合でも、念のため時間を見つけて内科での診察を受けることが重要です。

肩の痛みの検査

痛みの原因を正確に把握するには、画像検査などによる評価が必要です。

レントゲン

骨の変形や関節構造の異常を確認するのに適しています。骨同士の接触や負担がかかりやすい構造かどうかなども評価できます。

超音波検査

腱板断裂や筋肉の炎症、加齢変化など、筋肉や腱の状態を非侵襲的に確認できます。

MRI

筋肉・腱・靱帯などの軟部組織の損傷をより精密に調べることが可能です。

肩の痛みの治療

手術療法

骨折や腱断裂など、保存療法では不十分なケースでは、手術による治療を検討します。

再生医療

肩腱板の損傷や断裂といった組織の障害に対しては、組織の自然修復力を高める再生医療が有効とされています。
手術による治療が難しい方や、手術を避けたいと考える方にとっても、体への負担が少ない治療法として注目されているアプローチです。

肩の痛みに有効なストレッチ

緊張をリセットするストレッチ

長時間の同じ姿勢が肩のこりを悪化させることがあります。
1時間に1度を目安に、次のストレッチを行い、身体の緊張をリセットしましょう。

  1. 立った状態で背筋をまっすぐに伸ばします。
  2. 両手のひらを天井に向け、肘は軽く曲げてリラックスした姿勢にします。
  3. 胸を開くイメージで肘を後方に引きながら、肩の力を抜いてお腹に軽く力を入れます。
  4. その姿勢を保ったまま、深呼吸を数回繰り返します。

肩をしっかり上げるストレッチ

運動不足やデスクワークにより、肩を高く上げる機会が減ると筋肉が硬くなりやすくなります。
1日1回、以下のストレッチを習慣づけましょう。

  1. 肩幅に両手を広げて、壁に両手のひらをつけます。肘は伸ばしておきます。
  2. 頭を前に倒して両腕の間に入れます。
  3. そのまま、頭を少しずつ前方へ押し込んでいきます。肩から首がしっかり伸びていることを意識してください。
  4. 肩や首の伸びを感じたところで、深呼吸をしながら約30秒キープします。

肩を外に開くストレッチ

肩周りの可動域を広げるには、外旋(外向きに回す)ストレッチも効果的です。
肩上げストレッチとセットで1日1回行いましょう。

  1. 壁の近くに立ち、右肘を体側につけた状態で90度に曲げます。
  2. 右手のひらを壁につけたままにします。
  3. 肘は固定したまま、体を左方向にゆっくりと捻ります。右肩がしっかり開いているのを感じましょう。
  4. 肩が最も伸びている状態で約30秒キープします。
  5. 左右を入れ替えて、左肩も同様に伸ばします。